ポルトガルの観光地
TOURIST ATTRACTIONS
ポルトガルの都市や町をわかりやすく解説。人気観光地から穴場スポットまで、旅行者必見の魅力をまとめました。
リスボン地方

リスボン (Lisboa)世界遺産
ポルトガルの首都でありながら、どこかのんびりとした空気が流れる魅力的な街。7つの丘に囲まれた起伏ある風景に、赤い屋根と白壁の家々が連なり、歴史と詩情を感じさせる。リスボン大地震の記憶を残すバイシャ地区、古い路面電車が走るアルファマの迷路のような路地、大航海時代の栄華が息づくベレン地区など、歩くたびに異なる顔を見せる。ファドが流れる夜、美しいタイル(アズレージョ)、トラムから眺める夕焼け、エッグタルトの甘い香り――伝統とモダンが重なり合うこの街は、どこを切り取っても絵になる。 地元の人々の温かさも、リスボンの大きな魅力のひとつ。

シントラ (Sintra)世界遺産
リスボンから電車でわずか40分ほどの距離にあり、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような町。山あいに広がる緑豊かな風景の中に、色鮮やかなペーナ宮殿や中世のムーアの城跡、ロマンチックなキンタ・ダ・レガレイラなど、幻想的な建築が点在する。19世紀にはヨーロッパの貴族たちに愛された避暑地として栄え、その優雅な面影は今も息づき、町全体がユネスコ世界遺産に登録されている。小さな町ながら、ひとつひとつのスポットが濃密で、歴史、神秘、芸術性が凝縮された空間。散策の合間には、伝統菓子「ケイジャーダ」や「トラヴセイロ」を味わうのも楽しみのひとつで、リスボン滞在中の日帰り旅行先として欠かせない存在。

ロカ岬 (Cabo da Roca)
ユーラシア大陸最西端の地として知られる、ポルトガル屈指の絶景スポット。切り立った断崖の向こうには広大な大西洋の水平線が広がり、「ここに地終わり 海始まる(Onde a terra acaba e o mar começa)」と刻まれたカモンイスの詩碑が、訪れる人の心を揺さぶる。リスボンやシントラからバスや車でアクセスでき、旅の締めくくりにもふさわしい場所。風の強い日が多いが、その分、自然の雄大さや「大地の端に立つ」感覚がより鮮明に伝わってくる。岬には灯台やカフェ、訪問証明書が発行される記念館もあり、「世界の果てに来た」という実感を与えてくれる特別な地。ロマンと地理的迫力が交差する、大西洋の絶景ポイント。

エストリル (Estoril)
リスボンから電車で約30分、大西洋を望むエレガントな海辺のリゾート地エストリルは、上品で落ち着いた雰囲気と歴史を併せ持つ街。20世紀前半にはヨーロッパ各国の王侯貴族や亡命者たちがこの地を訪れ、洗練された文化と国際的な空気が今も漂っている。町の象徴であるヨーロッパ最大級の「カジノ・エストリル」は、ジェームズ・ボンドの原点となったスパイ小説『カジノ・ロワイヤル』の着想の地ともされ、世界中のファンに知られている。周辺には美しいビーチや高級ホテル、緑豊かな公園が広がり、のんびりと海辺の時間を楽しむのに理想的な場所となっている。

カスカイス (Cascais)
リスボンから電車で約40分、ポルトガル屈指の上品な海辺のリゾートタウン、カスカイスは、美しい入り江や砂浜、歴史ある街並みに洗練されたレストランやブティックが調和し、都会の喧騒を離れてゆったりと過ごせる魅力がある。かつて王室の避暑地として栄えたこの町には、今も19世紀の優雅な邸宅や宮殿が残り、色鮮やかなタイルで彩られた広場やカフェが点在し、海辺を散歩するだけでも心が癒される。透明度の高い小さなビーチが点在し、アクセスの良さから日帰りでも十分楽しめるほか、断崖絶壁「地獄の口」では大西洋の荒波が生み出す迫力ある自然の景観を堪能できる。さらにアートと文化の香りも豊かで、「パウラ・レゴ博物館」をはじめとしたギャラリー巡りも魅力のひとつ。

マフラ (Mafra)世界遺産
リスボンから北へ約40kmのマフラは、ユネスコ世界遺産に登録されたポルトガル最大級のバロック建築「マフラ宮殿」で知られる町。18世紀にジョアン5世が建設したこの壮大な複合施設は、王宮・修道院・大聖堂を併せ持ち、豪華な広間や36,000冊を誇る修道院図書館など見どころが豊富だ。背後には王族の狩猟場だった自然保護区「タパダ・ナシオナル・デ・マフラ」が広がり、歴史と自然を一度に味わえる魅力的な場所で、周辺には昔ながらの町並みや地元グルメも楽しめる。

セトゥーバル (Setúbal)
リスボンから南へ約40km、自然・歴史・産業・グルメが融合する港町セトゥーバルは、青い海岸「コスタ・アズール」や手つかずの自然が残るアラビダ自然公園に囲まれた魅力あふれるエリア。サド川に生息する野生イルカの観察ボートツアーは特に人気で、年間を通して子どもから大人まで楽しめるアクティビティとして知られる。透明度の高いビーチも点在し、日帰りでも大自然を満喫できるほか、新鮮な魚介料理が自慢のグルメタウンでもあり、特に名物のモンゴウイカのフライは一度は味わいたい逸品。活気ある市場「メルカード・ド・リベイラ」では、港町ならではの風情と食の魅力を存分に味わえる。

エリセイラ (Ericeira)
リスボンから北西へ約50km、車やバスで約1時間の距離にあるエリセイラは、海とサーフィン、そして素朴な漁村の風情が魅力のリゾート。2011年にはヨーロッパ初の「世界サーフィン保護区」に指定され、一年を通して押し寄せる良質な波が世界中のサーファーを惹きつける。岩場と砂浜が交互に続く海岸線は風光明媚で、散策するだけでも心地よい。白壁と青縁の家々が並ぶ旧市街にはカフェや家庭的なタベルナが点在し、地元漁港で水揚げされたロブスターやシーフードのカタプラーナなど、新鮮な魚介料理は格別。海のエネルギーとグルメ、そしてゆったりと流れる時間が調和するこの町は、日帰りでも滞在でもその魅力を存分に味わえる。
エストレマドゥーラ・リバテージョ地方

オビドス (Óbidos)
リスボンから車やバスで約1時間半、ポルトガル中部に位置するオビドスは、中世の面影を色濃く残す小さな城壁の町。その美しさから「ポルトガルで最もロマンチックな村」と称され、歴代の王が王妃への贈り物としていたことから「花嫁の町」とも呼ばれる。町全体が石造りの城壁に囲まれ、城門「ポルタ・ダ・ヴィラ」をくぐれば、白壁に色鮮やかな花が映える家々と石畳の路地が続き、まるで時が止まったかのような情景が広がる。城壁の上を歩けば、周囲の丘陵地帯や赤い屋根の町並みを一望できるのも魅力。名物のサクランボのリキュール「ジンジーニャ」は、チョコレートカップで味わうのが定番だ。

ナザレ (Nazaré)
リスボンから北へ約120km、大西洋に面したナザレは、伝統と迫力ある自然が融合する漁師町。素朴な海辺の風景と、世界最大級の波が押し寄せるサーフィンの聖地として国際的にも名高い。町はビーチ沿いの「プライア地区」、崖上の「シティオ地区」、その中間の「ピデデ地区」に分かれ、特にシティオ地区からの断崖絶壁越しに望む海と町並みの眺望は圧巻。ケーブルカーで簡単に行き来できるのも便利だ。町には漁師文化と深い信仰が息づき、伝統衣装をまとう女性や浜辺で魚を干す光景など、昔ながらの暮らしが今も残る。新鮮な魚介料理も魅力で、カタプラーナをはじめ港町ならではの素朴で滋味深い味が楽しめる。

トマール (Tomar)世界遺産
リスボンから約140km内陸にあるトマールは、テンプル騎士団の本拠地として栄えた歴史都市で、中世の面影が色濃く残る町。世界遺産「キリスト修道院」は12世紀に騎士団によって築かれ、ロマネスク、ゴシック、マヌエル様式など多様な様式が融合した壮麗な建築美を誇る。石畳の旧市街にはカフェや伝統菓子店、静かな広場が点在し、穏やかな時間が流れる。4年に一度の「タブレイロス祭」では、パンと花で飾られたお盆を頭に載せた女性たちのパレードが町を彩り、中世から続く伝統と誇りを今に伝える。歴史、宗教、建築が交差する小さな町ながら、その奥深い魅力は訪れる者を惹きつけてやまない。

アルコバサ (Alcobaça)世界遺産
リスボンから北へ約120kmに位置するアルコバサは、荘厳な修道院と悲恋の物語で知られる歴史の町。12世紀創建の「アルコバサ修道院」はポルトガル最古かつ最大級のシトー会修道院で、世界遺産にも登録されている。特に見逃せないのが、王妃イネス・デ・カストロとドン・ペドロ1世の石棺で、最後の審判の日に再会できるよう向かい合わせに安置されている。その配置は訪れる人に深い感動を与える。町はこぢんまりとしており、修道院周辺にはカフェや菓子店が並び、名物「修道女のお菓子」は卵黄をたっぷり使った濃厚な味わいで土産にも最適。静かで美しいアルコバサは、ナザレやバターリャと組み合わせての日帰り観光にもぴったりだ。

バターリャ (Batalha)世界遺産
リスボンから北へ約130km、アルジュバロータの戦いの勝利を記念して建てられたバターリャ修道院で知られる町。ポルトガル・ゴシック建築の傑作とされるこの修道院は世界遺産に登録され、マヌエル様式やフランボワイヤン様式が融合した壮麗な意匠が圧巻だ。中でも天井のないまま残された「未完成の礼拝堂」は、石造建築の美と空の広がりが一体となった幻想的な空間。国王ジョアン1世一家の墓所もあり、王家の歴史を間近に感じられる。町は静かで落ち着きがあり、アルコバサやナザレ、ファティマとあわせて巡る中部ポルトガルの歴史探訪に最適な地だ。

ファティマ (Fátima)
リスボンから北へ約130kmに位置する、世界的に有名なカトリック巡礼地ファティマ。1917年、3人の子どもたちの前に聖母マリアが6回出現したとされる「ファティマの奇跡」をきっかけに、世界中から巡礼者が集まる信仰の聖地となった。毎年5月から10月の12日・13日には数十万人規模の巡礼が行われ、キャンドル行列や厳かなミサが執り行われる。広場では膝をついて進む巡礼者の姿も多く、訪れる人々の心を打つ。宗教を問わず、祈りや平和、静寂を感じられる特別な場所であり、旅の中でも深い感動を与えてくれる体験となる。
アレンテージョ地方

エヴォラ (Évora)世界遺産
リスボンから東へ約130km、アレンテージョ地方に位置するエヴォラは、町全体がユネスコ世界遺産に登録された歴史と文化の宝庫。1世紀に建てられたローマ神殿や重厚なエヴォラ大聖堂、そして無数の頭蓋骨と骨で覆われた人骨礼拝堂など、印象的な見どころが点在する。城壁に囲まれた旧市街は白壁の家々と石畳の道が続き、穏やかでゆったりとした時間が流れる。アレンテージョ料理や地元ワインも格別で、歴史・グルメ・風景が揃う理想的な滞在地。ポルトガルの奥深い歴史と地方文化を五感で味わえる旅先だ。

エストレモス (Estremoz)
エヴォラの東約45km、スペイン国境に近いアレンテージョ地方の丘の上に広がるエストレモスは、白い大理石と陶器で名高い美しい城塞都市。丘上の旧市街には中世の面影が色濃く残り、13世紀築のエストレモス城や、王妃イザベルが暮らした宮殿などが点在する。現在、城はポザーダ(歴史的建造物を改装したホテル)として利用され、宿泊も可能。素朴で愛らしい「エストレモス人形」はユネスコ無形文化遺産に登録されており、この町の象徴的な工芸品だ。土曜には朝市が立ち、地元の野菜、チーズ、陶器などが並び、アレンテージョらしい素朴な暮らしを感じられる。観光客がまだ少なく、静かな町歩きと土地の温もりを楽しめる隠れた名所である。

レドンド (Redondo)
エヴォラから南東へ約35km、陶芸とワインで名高いレドンドは、その名の通り丸みを帯びた村の形が特徴的な、小さくも魅力あふれる集落。白壁に青や黄の縁取りが施された家々が並び、穏やかで静かな空気が流れている。村の誇りは、代々受け継がれてきた陶器づくり。レドンド焼きと呼ばれるカラフルで素朴な絵柄の食器や花瓶は、ポルトガルの家庭で長く愛されており、村内には工房や陶器博物館も点在する。見学や絵付け体験ができる場所もあり、旅の思い出作りにもぴったりだ。また周囲はアレンテージョ有数のワイン産地で、複数のワイナリーが点在。ブドウ畑に囲まれた景色の中で、試飲や見学を楽しみながら、ゆったりと流れるワインの時間を味わえる。

モンサラーシュ (Monsaraz)
エヴォラから約50km、アレンテージョの丘の上にひっそりと佇むモンサラーシュは、中世の面影を色濃く残す白亜の城壁に囲まれた村。全体が要塞のように静かに時を刻み、「沈黙の音が聞こえる」と形容されるほどの深い静寂が広がる。白壁の家々が連なる細い路地はどこを切り取っても絵になり、丘の頂に建つモンサラーシュ城の展望台からは、アルケヴァ湖と果てしないアレンテージョの大地が一望できる。夜になれば満天の星が頭上に広がり、星空観察の名所としても知られる。華やかさではなく「何もないこと」の贅沢を味わえる場所であり、耳に届く静けさ、肌を撫でる風、心に沁みる沈黙こそが、この村の真の魅力だ。

マルバオン (Marvão)
スペイン国境近く、標高約860メートルの岩山の頂に築かれた村は、まるで空に浮かぶかのような姿から「ポルトガルで最も美しい村のひとつ」と称される。起源はイスラム時代にさかのぼり、天然の要塞ともいえる断崖の上には中世の城塞が築かれ、今も城壁や塔がほぼ完全な姿で残る。村は小さく、白壁の家々と石畳の小道が連なり、時間が止まったような落ち着いた空気が漂う。観光地化されていない静かな環境の中で、地元の暮らしや素朴な文化に触れられるのも魅力。秋には栗の名産地として知られ、毎年11月の「栗祭り」では焼き栗や栗を使った伝統料理、菓子が並び、多くの人でにぎわう。

エルヴァス (Elvas)世界遺産
スペイン国境近く、アレンテージョ地方に位置する要塞都市エルヴァスは、2012年にユネスコ世界遺産に登録された歴史の町。巨大な星形要塞や、全長約7kmにも及ぶアモレイラの水道橋など、軍事建築の傑作が今も残り、その規模と保存状態に圧倒される。城壁に囲まれた旧市街には白壁の家々と石畳の路地が広がり、静かな空気の中にもかつての防衛都市としての緊張感が漂う。要塞や見晴らしの良い高台からは、国境の大地と歴史の重みを一望できる。郷土料理も魅力で、オリーブオイルや干しダラを使った素朴な味わいは旅の楽しみを一層深めてくれる。多文化が交わるこの町は、歴史好きや建築好きにこそ訪れてほしい隠れた名所だ。
ポルト地方(北部)

ポルト (Porto)世界遺産
ポルトガル北部に位置する第2の都市ポルトは、歴史・文化・美食・ワイン・景観が融合した魅力あふれる街。ドウロ川沿いの旧市街は石畳の路地とカラフルな建物が中世の面影を残し、世界遺産にも登録されている。ギュスターヴ・エッフェルの弟子が設計した二層構造の美しい鉄橋ドン・ルイス1世橋からは街と川の絶景を一望でき、対岸ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアのワイナリーでは本場のポートワインを味わえる。ハリー・ポッターのモデルになったレロ書店、アズレージョで彩られたサン・ベント駅、ポルトの象徴クレリゴス教会と塔、地元の活気があふれるボリャオン市場など見どころも豊富。歩くたびに新しい発見がある魅力的な都市だ。

ヴィアナ・ド・カステロ (Viana do Castelo)
ポルトガル北部ミーニョ地方、リマ川の河口に位置する港町ヴィアナ・ド・カステロは、海と山、歴史と伝統文化が調和する風光明媚な地。丘の上にそびえる町の象徴「サンタ・ルジア教会」からは、大西洋とリマ川、赤い屋根の街並みが広がるパノラマが望め、「世界三大絶景」とも称される美しさを誇る。ケーブルカーで気軽にアクセスでき、石畳の路地が続く旧市街にはルネサンス様式の噴水や教会、マヌエル様式の建築が点在。さらに、金細工(filigrana)や手刺繍などの伝統工芸が今も息づき、小さな職人工房を巡る楽しみもある。

ブラガ (Braga)世界遺産
ポルトガル北部に位置するブラガは、同国最古級の都市で「ポルトガルのローマ」と称される宗教都市。紀元前にローマ人によって築かれ、長きにわたりカトリックの中心地として栄えてきた。石畳の小道と歴史的建築が調和する中心部は徒歩散策に最適で、多くの教会や修道院が点在する。中でも18世紀建造の世界遺産、ボン・ジェズス・ド・モンテ聖域は森の丘にそびえ、ジグザグのバロック階段を登る巡礼で知られる。また、毎年春の聖週間には街全体が荘厳な宗教行列と祈りに包まれ、国内外から多くの巡礼者が訪れる。精神的重厚さと華やかさが同居する、ポルトガル屈指の聖なる都だ。

ラメゴ (Lamego)
ポルトガル北部ドウロ地方に佇むラメゴは、宗教と歴史の重みを湛えた美しい丘の町。緑豊かなブドウ畑に囲まれ、ドウロ渓谷観光の途中に立ち寄るにも最適な場所だ。町の象徴である18世紀のレメディオス聖母教会へは、彫刻や泉で彩られた686段のバロック階段を登って辿り着く。巡礼者が今もひざまずきながら階段を上る姿は、この地に根付く深い信仰を物語る。毎年8月末から9月初旬にかけて行われる聖女レメディオス祭では、ミサや行列、花火が街を包み、聖女像を雄牛が引くという珍しい伝統も見られる。ワインの名産地としても名高く、ポルトやドウロワインに加え、スパークリングワインも特産。信仰、自然、食、ワインが調和するラメゴは、まさにドウロ地方の静かな宝石だ。

ギマランイス (Guimarães)世界遺産
ポルトガル北部にある「ポルトガル誕生の地」として知られる歴史都市で、初代国王アフォンソ・エンリケスが即位した場所として国民的誇りを象徴する。ユネスコ世界遺産に登録された旧市街は、中世の面影を色濃く残し、ギマランイス城、サン・ミゲル教会、ブラガンサ公爵館などの歴史的建築が点在する。毎年8月のグアルテリアナス祭では華やかなパレードや花火が町を彩り、訪れる人々を魅了する。ポルトからのアクセスも良く、歴史と文化を深く味わえる必見の町。また、中世の街並みにモダンな文化や芸術が溶け込む街としても知られ、2012年には「欧州文化首都」に選ばれ、多彩なイベントや展示が開催された。

アマランテ (Amarante)
ポルトガル北部、ドウロ地方の西端に位置する小さな町で、歴史的建築と自然の美しさが調和したロマンティックな雰囲気が魅力。タメガ川に架かる優美な石橋「サン・ゴンサーロ橋」と、その隣に佇む荘厳なサン・ゴンサーロ教会は町の象徴で、訪れる人を穏やかで詩情あふれる景観に誘う。芸術家や詩人に愛された町としても知られ、20世紀初頭の画家アマデオ・デ・ソウザ=カルドーゾの故郷でもあり、その作品は「アマランテ美術館」で鑑賞できる。毎年6月のサン・ゴンサーロ祭では、恋愛の象徴とされるユニークな形の菓子を手にした人々で賑わい、地元の温かな伝統文化に触れられる。

ポンテ・デ・リマ (Ponte de Lima)
ミーニョ地方に位置する国内最古の村のひとつで、美しい自然と豊かな歴史が息づく落ち着いた町。名前の由来となった「リマ川に架かる橋」はローマ時代から残る石橋で、その周辺の風景は絵画のような美しさを放ち、訪れる人々を魅了する。「ヴィーニョ・ヴェルデ」の産地としても知られ、緑豊かなブドウ畑の風景とともに、軽やかで爽やかな味わいのワインが楽しめる。2年に1度の庭園フェスティバルや、毎年9月に行われる伝統行事「聖体の行列」では、町全体が色鮮やかに彩られ、地域の誇りと文化に触れられる。中世の趣を今も残す旧市街や静かなリバーサイドの散策路は、穏やかな時間を過ごしたい旅行者の理想を叶える。

ピニャオン (Pinhão)世界遺産
ドウロ渓谷の中心に位置する小さな村で、世界的に知られるポートワインとドウロワインの産地に囲まれた、美しい風景が広がるワインの里。ドウロ川沿いに佇み、段々畑のように広がるブドウ畑の丘に囲まれた景観は、世界遺産にも登録されている。川下りのボートツアーやドウロ線の列車旅の拠点として人気が高く、大自然とワイン文化の両方を味わえる場所だ。見逃せないのがピニャオン駅のアズレージョで、駅舎の壁面にはワイン造りや収穫の様子を描いた美しいタイル画が並び、村の歴史と暮らしを物語る。周辺にはワイナリーが点在し、地元食材を使った料理とともに極上のワインを楽しめる。まさにドウロの魅力が凝縮された村だ。
ベイラス地方(中部)

コイブラ (Coimbra)世界遺産
中部に位置する歴史と学問の街で、かつて首都として栄えた古都。ヨーロッパ最古の大学のひとつであるコインブラ大学が、1290年の創立以来、街全体に知性と伝統の薫りを与えてきた。バロック様式のジョアニナ図書館や礼拝堂は必見の建築美で、丘の上に広がる旧市街には石畳の細い路地が迷路のように続き、黒マント姿の学生たちが行き交う光景は街の象徴だ。ロマネスク様式のサンタ・クルス修道院や、初代国王アフォンソ・エンリケスが眠る旧大聖堂など、歴史的建造物も多く点在する。毎年5月には卒業を祝う「ケイマ・ダス・フィタス」が盛大に行われ、街全体が音楽と喜びに包まれる。

モンサント (Monsanto)
スペイン国境に近い内陸部にある小さな村で、「ポルトガルで最もポルトガルらしい村」と称される伝統と絶景の地。最大の特徴は、巨大な花崗岩と共生するように建てられた家々で、まるで岩に家が埋め込まれたかのような独特の風景が広がる。石造りの民家が坂道に沿って積み重なり、中世の趣を残す村の頂上には12世紀築のテンプル騎士団ゆかりのモンサント城跡がそびえ、そこからの眺望は圧巻。観光地化されすぎていない静けさも魅力で、車では上まで行けないため、歩いて登る道のりも旅情を深める。ポルトガルの原風景と時の流れを感じられる村だ。

アヴェイロ (Aveiro)
「ポルトガルのヴェネツィア」と称される港町アヴェイロは、美しい運河とカラフルなゴンドラ風ボート「モリセイロ(Moliceiro)」が町の象徴。リスボンとポルトの中間に位置し、ポルトから電車で約1時間半とアクセスも良く、日帰り旅行に最適だ。町の中心には運河が縦横に走り、鮮やかな絵で彩られたモリセイロが観光客を乗せて静かに進む。運河沿いにはアールヌーヴォー様式の建物や愛らしいショップが並び、どこを切り取っても絵になる光景が広がる。名物スイーツ「オヴォシュ・モレス(Ovos Moles)」は卵黄と砂糖の濃厚クリームを薄い皮で包んだ逸品で、お土産にも人気。

コスタ・ノヴァ (Costa Nova)
アヴェイロから車で約15分、大西洋に面した美しいビーチリゾート、コスタ・ノヴァ。最大の特徴は、海岸沿いに並ぶカラフルな縞模様の木造ハウスで、もとは漁師たちの倉庫として使われていたものが、今ではリゾートらしい愛らしい景観として人気を集めている。広々とした白砂のビーチと風の強い海は、サーフィンやボディボードに最適で、夏には多くの人々で賑わう一方、オフシーズンは静かでのんびりと散歩やカフェタイムを楽しめる。絵本の世界のような街並みと、海の開放感が融合した、ポルトガル屈指のフォトジェニックな海辺の町だ。

アゲダ (Agueda)
ポルトとコインブラの間に位置する中部ポルトガルの小さな町、アゲダ。夏になると世界中の旅行者を魅了する「カラフルな傘の街」として知られている。毎年7月から9月に開催されるアゲダ・アート・フェスティバルでは、町の中心部に色とりどりの傘が頭上に吊るされ、通りを歩くと地面に幻想的な影が広がる。この「アンブレラ・スカイ・プロジェクト」はSNS映え抜群のフォトスポットとして人気を集めるほか、町中には壁画やインスタレーションアートが点在し、ライブ音楽や屋台も加わって祝祭空間を演出する。小さな町ながら、アートと色彩の楽園として訪れる価値が高く、コインブラやアヴェイロから日帰りでのアクセスも容易だ。

ブサコ (Buçaco)
コインブラの北東約30km、ルーゾ近郊にあるブサコ国立森林公園は、神秘的な森と宮殿が魅力の隠れた名所。17世紀、カルメル会修道士によって守られたこの森には、1000種以上の植物が自生・移植され、“緑の大聖堂”とも称される荘厳な雰囲気が漂う。森の中には修道士の小道や礼拝堂、展望台、戦争記念碑などが点在し、歩くだけで歴史と自然の調和を感じられる。そして最大の見どころが、森の中心にそびえるブサコ宮殿ホテル。かつてポルトガル王家の離宮として建てられた、マヌエル様式と新ゴシック様式が融合した壮麗な建築で、現在は宿泊も可能。まるでおとぎ話の世界に足を踏み入れたような体験が待っている。

ヴィゼウ (Viseu)
ドウロとダオンの間に位置する内陸の歴史都市ヴィゼウは、美しい丘の上に広がる落ち着いた雰囲気の町。ローマ時代の遺構から中世の城壁、優雅な広場や教会が点在し、古都らしい風情を漂わせる。中心には荘厳なヴィゼウ大聖堂がそびえ、隣にはポルトガルを代表する画家グラサ・モラエスの作品を所蔵する美術館もある。石畳の旧市街では、伝統的な建築と現代アートが調和する街並みを散策できる。ワイン産地ダオン地方の中心都市としても知られ、周囲では上質な赤ワインが生産され、ワイナリー巡りも人気。夏のサン・マテウス祭は600年以上の歴史を誇り、多くの人で賑わう。

カステロ・ブランコ (Castelo Branco)
ポルトガル中部内陸に位置する歴史ある町カステロ・ブランコは、「白い城」の名の通り古代から要塞都市として栄え、内陸らしい素朴で温かな雰囲気を持つ。丘の上の中世城跡からは町と平野を一望でき、バロック様式のビショップ・パレス庭園では幾何学模様の植栽や石像が美しい景観をつくる。伝統工芸「カステロ・ブランコ刺繍」は花や鳥をモチーフにした繊細な手仕事で、リネン製品は人気の土産。落ち着いた町並みと地元の暮らしに触れられる、ポルトガルの素顔が残る場所で、周辺には自然公園や温泉地も点在する。
アルガルヴェ地方(南部)

ラーゴス (Lagos)
アルガルヴェ地方西部に位置する港町ラーゴスは、美しい海岸線と歴史が調和する人気リゾート。最大の見どころは、断崖絶壁と洞窟、アーチ状の岩場が連なるポンタ・ダ・ピエダーデで、透明度の高い海と金色の岩肌がつくる景観はまさに自然の芸術。カヤックやボートで間近に迫れば迫力も格別だ。旧市街は白壁の家と石畳の路地が広がり、カフェやショップがにぎわいを見せる。大航海時代には重要港として栄え、奴隷市場跡など歴史的建造物も残る。周辺にはプライア・ド・カミーロやドナ・アナ・ビーチなど魅力的なビーチも点在し、海と町歩きの両方が楽しめる。

タヴィラ (Tavira)
アルガルヴェ東部の町タヴィラは、美しい歴史的町並みと運河、そして自然豊かなビーチが魅力。ファーロから東へ約30km、静かで落ち着いた雰囲気が漂う。かつてイスラム文化が栄え、その影響は白壁の建物やアズレージョ装飾に今も息づく。中心部にはローマ橋やタヴィラ城跡など歴史的見どころが点在し、ジラオン川と調和した景観が訪れる人を魅了する。夕暮れ時には川辺のテラスカフェでのんびり過ごすのも心地よい。ビーチリゾートとしても人気で、船で渡るタヴィラ島には広大な白砂と穏やかな海が広がり、家族連れや自然派の旅行者にぴったりだ。

オリャオン (Olhão)
アルガルヴェ東部の港町オリャオンは、漁業とシーフードで知られる活気ある町。白く平たい屋根の家々が並ぶ旧市街はモロッコ文化の影響を感じさせ、迷路のような細い路地を歩くだけでも楽しい。川沿いの市場は特に有名で、新鮮な魚介や地元食材がずらりと並び、常に賑わいを見せる。ここはリア・フォルモーザ自然公園への玄関口でもあり、ボートツアーでラグーンの島々を巡れば、透明な海と静かな砂浜が広がる素朴な風景に出会える。漁師町の温かさと自然の美しさが共存する、アルガルヴェの穴場的存在だ。